3.13重税反対全国統一行動にお集りのみなさん、御苦労さまです。私は全国商工新聞の記者の玉坊と申します。いつも御愛読ありがとうございます。
 さて、さる2月25日に、勝利判決を受けていたいわゆる「北村人権裁判」で、被告が控訴せず勝利判決が確定しました。みなさんも商工新聞などでお読みになって、すでに御存じだと思いますが、なにせ事件は8年も前におこっていますからどんな事件だったか、ここでおさらいしときましょう。場所は京都です。京都地方裁判所です。相手は大阪国税局下京税務署長です。「青色申告承認取り消し処分」の取り消しを求めていた裁判です。1992年3月30日昼すぎのことです。衣料品店を経営する北村さんのお店2ケ所、京都店と滋賀県大津市の唐崎店なんですが、そこになんの事前の連絡もなく同じ時刻に大阪国税局の調査員5人と、下京税務署員3人がやってきたんです。北村さんは留守中で、店には女性ばかりでした。
 「主人は仕入れにでかけているので、後日にしてほしい」というのも聞かず、調査員らは身分証明書らしきものをちらつかせて「これがあったらなんでもできるんや」とすごみました。おおこわ、神奈川県警とあんまり変わらんようです。京都店では2階の寝室に無断で上がりこみ、たんすやベッドの下のひきだしの下着まで引っかき回す無法。唐崎店では、ゴミ箱をあさり、従業員のバッグまでひったくり、検査しました。われわれ民商の会員や役員らがかけつけ「令状はあるのか」と問いただし抗議するなか「調査」を中断しました。
 その後、謝罪と事実関係の調査を求める北村さんにたいし、税務署側は事実関係を説明するなど誠実な対応はいっさいしませんでした。そればかりかお客さんの前で注意書きを大声で読み上げるなどのいやがらせを繰り返し、北村さんの尾行までしました。「こんなことに泣き寝入りはできない」と北村さんは同じ年に国家賠償訴訟をおこしました。その報復のように下京税務署は「調査に協力的でない」と「青色申告承認取り消し処分」をし、推計により所得税の更正処分をした結果、北村さんにたいし、膨大な税金を課しました。しかし、国家賠償訴訟は1995年1月の京都地方裁判所と、1998年の大阪地方裁判所において「承認なしの任意調査は違法」と全面勝訴しました。今回の判決は、その後も調査は「違法ではない」と居直りつづけた当局に対し、違法な調査による処分は違法、と三たび断罪するものとなりました。
 判決文では、3月30日の「税務調査」を「任意調査として許される限度を超え違法」、その後の「税務調査」についても「社会通念上相当の限度を逸脱した違法なもの」つまり「社会の常識をおおきくはずれていて法律にも違反する」と判断。北村さんの再三の申し入れにもかかわらず、誠実に理解を得る努力をしなかったと、原告の主張を全面的に受け入れました。
 事件当時、北村さんは、唐崎店を新しく開店したばかりでした。通常ならば、売り上げをのばさなければならない大事な時期に、税務署のいやがらせに泣かされました。また、直接の被害にあった妻や母親は、事件の恐怖がよみがえり悩まされました。
 国を相手に一人の納税者が挑んだたたかいを支えてきたのは、仲間の支援と「こんなことが民主主義の国であってはならない」という怒りでした。北村さんは「違法と断罪されてもなおのうのうとしている税務当局の態度は常識では考えられない。官庁や警察のなれ合いや無責任さが問題とされている時、税務署がこのままでいいはずはない」と言っています。
 「ともに闘う会」では「判決は原告個人だけの問題ではなく、税務当局の納税者の権利を蹂躙する違法な税務行政に司法判断を下したものであり、税務行政の適正化に大きく貢献するとともに、全国の納税者の権利の確立、さらに納税者の権利憲章確立の闘いに大きな影響を与える」との声明を発表しました。
 ここ高知でもわれわれの仲間2名が税務当局を相手に、税金裁判を闘っています。ぜひ勝利し、私にいい記事をかかせていただきたいと思います。 

 もうひとつ、お話させて下さい。
 先日私が、確定申告の準備をしていますと、高2の息子が「おとうも脱税しゆうがか」と聞くんですよ。私は自分の息子に脱税者呼ばわりされショックだったんですが、何故そんなことを言うのか聞いてみると学校の教師が授業中に「自営業者はみんなあ脱税している」と言ったそうなんです。心外なことなのでその教師にまず理由を聞きに行ってきました。そしたら「自営業者の人はいろんな物を経費で落とせるが、私たち公務員は仕事に必要な物を買っても何も控除されない。不公平だ」と、こういう意味合いのことを言うんです。サラリーマンの友達などからみなさんも言われた経験をお持ちだろうと思いますが、でも、これは誤解です。彼等にも必要経費はちゃんと認められているんです。もちろん我々のような形でではありませんが「給与所得者控除」というのがありまして、これがサラリーマンの必要経費みたいなものです。市役所に行っている友達に聞くと年収約500万でだいたい160万の給与所得者控除があるそうなんです。だいたい3割です。支給額で毎月40万の給料ですと毎月12万円、なにかを買ってもいいですよ、ということです。12万円といったらみなさん、パソコンのアイマックが買える金額です。しかも、これを毎月買えるんです。そしてまんいち3割を超えてしまったら「特定支出控除」という制度が用意されています。いたれりつくせりなんです。
 失礼ですが税務署の職員のみなさん、仕事のために毎月こんなにお金を使ってますか。使ってくれていたらこの不況ももうちょっとはマシになっているかもしれませんが、谷山治雄という税制経営研究所という所の所長さんが「さまざまな試算がありますが、本・交際費・冠婚葬祭費など、どれほどの必要経費を計算してみても、まず収入の1割にも満たない金額にしかなりません」と言っています。そりゃそうですよね、必要なものは殆ど署が買ってくれるんですから。それで残りの2割は使わなくても税金を控除してくれるんですよ。かりにそれ以上使っても、さきほどいいました「特定支出控除」を適用すればいい。こんなウマイ話しはないですよねえ。我々がこんな事、つまり使ってもいないものを必要経費で落としていたら税務署にこしゃんちしぼられますが、彼等は見のがしてくれるようなシステムに最初からなっている。どっちが不公平だと思いますか?
 こんな事を先程の高校教師に言いますと「知らなかったこととはいえ失礼しました。生徒にはちゃんと説明してお詫びします」といってくれました。そしてこうもつけ加えました「自己弁護するわけじゃあありませんが、われわれ給料とりはほとんどの人が給与所得者控除というものがどういう性質のものなのか知らないと思う。いや、そういったものがあるという事実すら知らない人が大多数だと思います。こういう事を世間一般に広め、啓蒙するのも税務署の仕事ではないでしょうか。そうすればこんな誤解はすぐとけますよ」ある特定な団体をニセ税理士呼ばわりしたり、間違った宣伝をしている、などというヒマがあったら、この先生のいうような事もちったあやったらどうか。私はこう思いますが、みなさんいかがでしょうか。私たち事業所得者と給与所得者が互いにいがみ合い、羨ましがっていたんでは彼等権力側の思うツボなのではないでしょうか?
 道行くサラリーマンの方々もそのへんを御理解していただき、我々と共にこの「3.13重税反対全国統一行動」を戦っていこうではありませんか。

 納税者が知らないことをいいことに、控除できることを教えず、税金をむしりとる事例はたくさんあります。ごく最近相談にみえられた方の例をいいます。この方は内職をされていて、昨年秋に税務署から呼び出しがあり、3年間の申告をさせられました。その際税務署は、内職に認められている最低65万円の経費の控除はせず、御本人の書き出した必要経費を引いただけで課税。国税・地方税・国保等で大変な金額の負担となり四苦八苦して支払ったそうです。今年の申告に困って相談にみえ、65万円の控除を適用して計算しなおしてみると、所得税はほとんどかからないことが判明しました。内職に65万円の控除が認められていることを、自分で初めて税金を申告する人が知っていると思いますか?知らないのが普通じゃあありませんか。知らないのが悪い、とでも言うんでしょうか。当然認められていることを我々国民に教えないのが公務員である税務署員のすることでしょうか?知らない事はちゃんと教え、納税者である国民の側にたつのが、公僕としての公務員の努めではないでしょうか?間違った宣伝をしているのはどっちなんだと私は言いたい。