3.13重税反対全国統一行動にお集りのみなさん、御苦労さまです。私は全国商工新聞の記者の玉坊と申します。いつも御愛読ありがとうございます。でも、この不況で、仕事の確保に大変忙しく「商工新聞すら読むヒマがない」。そういう方が多いのもまた現実です。そういった方のために、今日は、最近の記事で気にかかったのを少し、御紹介したいと思います。
 最近、東京でおきた事件です。「人権侵害の調査だ」という事で、国会でも取りあげられましたのでご存知の方も多いと思います。
 東京は北区というところでペットショップを経営している戸田節代さんという方が昨年9月、税務調査を受けました。彼女は個人の青色申告で、税理士に相談しながらやってきて、税務調査の途中まで100パーセント税理士を信頼していたそうです。
 王子税務署の調査官は午前9時に来て、店の奥の休憩所に座り込み「レジのつり銭はいくらあるの」と聞きました。戸田さんは「5万円くらい」と答えました。調べると5万8千円ありました。するとO調査官は「ずさんだ。どういうふうにやっているのか。帳面も見せてくれ。レジの巻紙も」と言いました。でもみなさん、刻々と変わるレジのつり銭を、何千何百円単位で正確に言えますか?言えないのが普通でしょう。O調査官はこんな手口で追及のきっかけを作り、調査を繰り返してきたのだと思います。
 自宅まで強引に押し掛けたO調査官は、たんすの引き出しやバッグまですべてソファーの上に出させ、いやとは言わせない高圧的な態度で調査を始めました。任意の税務調査を大きく逸脱した行為です。そして調査官は「売り上げをチョンボしている」と修正申告を強要してきました。目が据わった調査官は「おれはプロなんだよ。間違ってないんだよ。どこが気に入らないんだ」とすごみました。10本の指を広げ「これが気に入らないなら、こうしてやっていいよ」と指を2本折り曲げました。この場でハンコをつけば100万円を80万円にまけてやる、という事です。税金を調査官の腹一つでまけてやる、というんですから、このことだけでもいいかげんです。O調査官はこういった仕事のやり方でこれまでも通って来たんでしょう。
 おかしいと感じた戸田さんはパソコンのホームページで東京・浅草民商を知り、そこの紹介で、北区の民主商工会に入会し、税務署交渉などを行いました。
 そして日本共産党の緒方参議院議員が今年の1月24日、参院決算委員会で取り上げ「昼食もとらせなかった」ひどい調査であることを国税庁に認めさせ、宮沢喜一財務相は「よくよく注意したい」と答えたのです。
 つぎも東京での事です。江東区で解体業をされている方です。
 税務署員が初めて来る二日前に、帳面をつけている奥さんが突然、急性心不全で倒れ、重体となり植物人間になってしまいました。御本人と娘さんは、看護に神経をすり減らす毎日でした。そんな時でも税務署員は平気で店にやって来るんです。そして「調査を待ってほしい」という再三の申し出も無視し、こっそり金融機関や取引先の反面調査を始めました。そして、奥さんが一時退院し、医療機器によってかろうじて呼吸をしているその部屋で「消費税が400万円くらいになります。払わないと利息がつきます」と言って帰り、350万円の更正決定を通知して来ました。「こんな処分と調査が許されるのでしょうか」とその方は語っていますが、許されるはずがないと私は思います。
 こういった人権無視の税務調査は全国いたるところで行われています。ここ高知も例外ではありません。
 先日、高知ではこういう事がありました。おべんとう屋さんに調査が入りました。ちょうどその頃、店の御主人の自宅ではお父さんが病気で寝ていました。かといってお店では狭く、お客さんも始終出入りするので調査はできないと思い、近所の公民館を借りていました。
 署員がやって来て言うのには「公民館は公の場だから、私は守秘義務を守れない。したがってここでは調査ができないから署まで来てくれ」……。みなさん、公民館が公の場である事を否定しませんが、だったら税務署は公の場ではないとでも言うのでしょうか?公の場所で調査ができないというのであれば、税務署でだってできないのじゃあないのか。私はそう思いますが、みなさんはどう思いますか?
 しかも、公民館では部屋をひとつ借り切っていたのですから、よっぽど大きな声を出さない限り外には聞こえません。でも、この、税務署の中を見て下さい。署員が一人ひとりの納税者に対し、ひとつの部屋を与えて申告相談に乗っていますか?そうじゃないでしょう。月光仮面じゃありませんが、どこの誰だか知らない人と、壁一つの仕切りもないじゃありませんか。これだとよっぽどヒソヒソ声で話さないと納税者の秘密が、赤の他人に聞こえてしまいますよ、税務署さん。と、いう事は、あなた方の論理では、守秘義務違反を犯している事になるんですよ、税務署さん。自分勝手な論理を振りまくんじゃない。ふざけるな。
 ま、私なんかよりずっと頭のいい国家公務員の皆さん方の事ですから、自分達のやっている事に、論理の一貫性がない事くらい、先刻御承知のことだと思います。それでも守秘義務を根拠に、立会い拒否を貫かざるをえない。……いんがな仕事を選んだというべきか、根っからのイジメッコ体質というべきか。でもね、そんなあなた方税務署員の中にも、真面目に税務行政に取り組んでいらっしゃる方も、少ないけれど、おられるわけです。出世欲に目がくらみ、大事な人間性まで失わないでいただきたいと思います。
 立会いの問題では、先日こんな事がありました。8年程前にも調査を受けた経験をお持ちの方でした。その時は我々仲間の立会人がいたうえで税務調査がおこなわれ、無事終わったから、今回も私達に立会いの要請がありました。当然、調査を受ける御本人からです。
 さて、やってきた署員は「立会人がいるから、守秘義務違反になるので調査はできない」と言いました。そこで「8年前はこの状態でできたのに何故だめなのか。いつからだめになったのか。いつ法律が変わったのか」と聞きましたが、とにかくできないの一点張りで、質問には答えません。「じゃ、8年前に調査をした人は守秘義務に違反したことになるのか」と聞きますと「その人はその人です。私は私のやり方で行います」と言うのです。驚くじゃあありませんか。彼の言い分だと「守秘義務」という法律の解釈が税務署員によって違う。こんなバカな話しがありますか。
 実は、今回やってきた署員は「仏のなんとか」と言われていたほど優しかった人で、過去においては立会人がいる元で、平然と調査を進めてきた人です。「あんたも昔はやりゆったやいか」と言いますと、辛かったのか「私の気持も分ってくださいヨ」と言いました。ま、気持はわかるけど、それで
もねえ、いいかげんなもんですよね。
 私は昨年この場所で、京都の「北村裁判」の完全勝利をお伝えしましたが、その裁判での成果とはなんでしょうか?それは、税務調査の手続きが違法であれば、それを前提にした更正処分も違法であるという事です。そして税務当局の強制調査まがいの「料調方式」は断罪されるべき調査であり、納税者との信頼関係を壊すような税務調査において、「立会い」は納税者の当たり前の権利であるということです。
 ここ高知でも、2件の税金裁判が戦われています。先日行われた「山本裁判」での税務署側の証人尋問では、自分が書いた書類に対して「見覚えがない。私が書いたものではない」などという、とんでもないというか、考えられない調査担当税務署員の証言がなされました。私は裁判をなめとんのかと驚きましたが、誰がどう考えても「山本勝利」は動かせないと思います。現に、山本さんはその時点で「判決がどうであれ私は勝ったと確信している」と語っています。
 もうひとつの「石黒裁判」は、すでに判決も言い渡されているはずでございましたが、裁判所の都合で延びてしまいました。裁判官も過労死する時代ですので、いろいろと悩んでいるのかもしれません。世間一般の常識で考えて、けっして勝ち目のない税務署側に、どうやって勝たそうかと悩んでいるのでしたら困ったことですが、そうではない事で大いに悩んで、庶民の苦しみも味わって頂かないと、三権分立も建て前だけになってしまいます。
 そういった事を最後に、私の話しを終わらせていただきます。みなさん、また来年も、ここでお会いしましょう。