みなさんこんにちは。「治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟高知県本部」の事務局の玉川です。

「治安維持法」といってもどんな法律だったのかを知らない方が増えているのが現状です。ですから、まず始めに、この法律について少しだけ述べたいと思います。レジメを参考にしながら聞いてください。

制定されたのは1925年です。天皇家を中心とする時の刻み方で言いますと、大正14年ということになります。普通選挙法と抱き合わせで制定されました。典型的なアメとムチですが、アメをもらったのは男子だけです。一方、ムチの方は3年後の1928年には早くも最高刑10年が、死刑に改悪されてしまいます。以降敗戦により廃止される1945年まで猛威をふるうわけですが、20年間の間に逮捕された人数十万人、送検された人75,681人、死刑判決、これは朝鮮の方ですが18人、明らかな虐殺80人以上、拷問・虐待による獄死114人、病気による獄死1,503人にのぼっています。
 
この法律の本質は四つに分けられます。 

第一に、戦前の天皇制政府が侵略戦争を推進するための法的武器であったという事です。制定6年後の1931年に戦争は始まっています。

第二に、治安維持法は、人類普遍の原理に反する悪法として、デッチあげ、拷問、虐殺など、驚くべき人権無視の弾圧体制を確立して、日本全土を暗黒支配のもとにおきました。

第三に、治安維持法による弾圧は、けっして共産主義者やその支持者にたいしてだけおこなわれたのではなく、政府の政策に批判的な国民はすべて弾圧の対象にされました。
アウシュビッツ、実はあれも当初の目的はユダヤ人を強制収容するために作られたものではないという事を2年前の国連ツアーで知りました。ナチが、戦争をするにあたって邪魔となる、ポーランドの進歩人を隔離するのが目的だったそうです。独裁者の考える事は、どこの国でも同じですね。

第四に、治安維持法にもとづく弾圧は、朝鮮での死刑執行でもわかるように、とくに植民地で猛威をふるい、民族独立闘争をようしゃなく圧殺しました。

驚いたことに日本政府は犠牲者にたいし賠償はおろか、謝罪すらしていません。同じ敗戦国のドイツでは連邦補償法で、ナチスの犠牲者153,000人に、年間1人あたり約80万円の年金を支給しています。またイタリアでは、ファシズム体制下で実刑を受けた「反ファシスト政治犯」に終身年金を支給しています。戦勝国のアメリカやカナダでは、第二次世界大戦中に強制収容した日系市民に補償および謝罪をおこなっています。そしておとなり韓国では、治安維持法による逮捕・投獄者には、民族独立運動に貢献した愛国者として大統領が表賞し、懲役1年以上の犠牲者には年金を毎月16万円支給しています。本来ならば、こんな事は日本の政府がやるべき事です。

今回の拉致問題にしたって犠牲者の家族は北朝鮮に対し、謝罪と賠償を要求しています。それはしごく当然の事です。しかし、日本政府は戦争で犠牲になった方々に、国内外を問わず賠償はいっさいしておりません。形だけの謝罪をした事はありますが、個人への賠償はなし。今回も過去への反省と謝罪は言いましたが、食料支援をするだけで、強制連行された方、従軍慰安婦にされた方、そういった方々やその遺族に対して、なんら賠償する気はないようです。そういった国を相手に、北朝鮮側だけが個人賠償に応じるはずがないと僕なんかは思います。

みなさんご存知のように、諸外国では、レジスタンス運動家や治維法犠牲者は英雄であり、祖国の誇りです。なのに、日本ではそうなっていないところに問題があります。命をかけて侵略戦争に反対した彼等を、私は日本の良心、誇りだと思っています。

我が同盟は、そういった日本国家に、謝罪と賠償を要求しようと、1968年に結成されました。戦後23年の事です。何度も言うようですが、治安維持法犠牲者は時の特高に拉致されたんです。それを戦後23年たって犠牲者が団結し、謝罪と賠償を要求した。それから40年近くもたっているのに未だに誠意ある回答を得ていない。私たちの運動を「それは昔のことやいか」と言う方々もいます。じゃあ、拉致から25年たった今回の北朝鮮による拉致事件も古いんでしょうか?そうではないですよね。

そして、日本政府にいくら言ったところでどうしようもないので、国際世論に訴えようと1997年からジュネーブにある国連人権小委員会で毎年訴えています。最初は「日本は侵略国家である。なのになぜ被害者としての言い分があるのか」と不思議がる専門委員の方もおいでたようですが、事実を知るにつれ皆一様に驚いたそうです。それだけ戦時中の日本の事なんか諸外国には知られていないのですね。

そういった努力が少しづつ実り、国会要請を引き受けてくれる議員も増えています。今年は160人に署名を託しました。また、要請行動前日に行われた同盟と森山法務大臣との会見にはNHKと朝日新聞が取材にきたり、会見後に法務省記者クラブで要請の趣旨についてレクチュアするなど、歴史的な前進もみられています。

歴史的な前進はみられていますが、いかんせん中心となって活動されてる方々は高齢の方が多いんです。僕も、今年の初めに中央理事会に参加しましたが、ご本人達が、周りの邪魔にならないようにと小さな声で話をしているつもりでも、内緒話になっていないんですよ。耳が遠いもんだから。そういった光景を目の当たりに見ますと、同盟も若返りをする必要がある、と痛感した次第です。
年配者の英知と若い人の行動力。そういったものが噛み合えば、同盟中央が新たな目標として掲げた50万署名と国会議員過半数の賛同、そして、過半数の地方議会での意見書採択は可能だと思います。

そういった時に、こういった交流をもてるのは非常に有意義なことです。おおいに質問づけにしてください。
では、次にすすみます。